9月金曜サロンスペシャル



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開催日:2015年9月4日(金)

話し手:湯浅栄理子さん(若葉台在住)

テーマ:都市計画コンサルタントってどんな仕事

    〜地域課題解決の最先端にいる面白さ〜

 

湯浅さんは、30年近く都市計画コンサルタントの仕事に携わってきました。その体験の中で、住民参加によるプランづくりで大切にしてきたことなどを、幾つかの事例をあげてお話していただきました。

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都市計画コンサルタントの仕事の大部分は、行政から委託されての仕事だそうで、しかもその大半は計画づくりの支援です。例えば行政全般に関わる長期総合(基本)計画に始まり、その一部である都市計画プランや住宅マスタープラン、景観(基本)計画、そしてもっと小地域を対象にした防災まちづくり計画や駅周辺整備計画、公園改修計画などです。

計画づくり以外にも、自治基本条例づくりの支援、庁舎新築計画づくりの支援、住民のまちづくり(研究)支援などがあり、湯浅さんが手がけてきた仕事はとても多彩です。

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では、都市計画コンサルタントの役割は何か?湯浅さんは、行政職員には弱点も含めて特質がある。住民側も同様である。その中間にいて、両者をつなぎ、補完するのがコンサルタントの役割だと言います。

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最近の行政計画づくりで重視されていているのは、計画に住民の意見をどういう形で反映させるかということです。その一方法として、計画づくりのプロセスにまで住民に参加してもらうことで、それが当たり前になりつつあります。しかも、作ってしまえば終わりではなく、それを実現のために、行政と市民とが相互に持てる資源を出し合い、協力し合って進めていく、すなわち協働のまちづくの視野が求められます。

湯浅さんの話からも、コンサルタントとしてその視点を重視し、腐心している様子が伺えました。
参加者1 

 例えば、事例として紹介してくれたU市の基本計画(総合計画)づくりでは、市民参加の手法として市民会議を立ち上げますが、それに応募した市民は206人。そこにさらに学識経験者(18人)と行政職員(23人)を加え、247人からなる市民会議が持たれました。

それを6つの部会に分け、1部会40人以上にのぼるメンバーで、論議を交わしながら各論が作られます。さらにそれをリーダー会議で共有、調整して、総論ができあがるといったように、とても丁寧なプロセスを経て原案が作成されるのです。ですから、そうした会議を運営するだけでも、コンサルタントの仕事がいかに大変かということが想像できます。
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そうやって、住民と行政職員とが同じ土俵の上で思いやアイデアを出し合い、調整し、議論し合ったことで、双方に協働の意識が芽生えた、と湯浅さんは言います。住民側で言えば「行政にお願いするだけではダメ、自分たちも汗を流流さなければ・・・」という意識です。
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U
市の場合、そうしたプロセスの中から生まれたのが「U市民大学」、そのキャッチフレーズは「ともに考え、ともに行動する協働社会の推進」です。

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※U大学のHPにはこんなふうに書かれています。

【設立の趣旨】

まちづくりの次のステージとして、「住みがいのあるまち」づくりを目しています。

それを実現するためには、市民と行政がより一層連携して、まちづくりに取り組んでいく協働社会を創っていく必要があります。

U市民大学は、まちづくり活動を行うために必要な知識や技術を学び、市民自らが地域貢献する協働の担い手として、活躍するための学びの場として開校しました。

【特色】

U市民大学の学習は、その成果が確実に地域に活かされることを重要視しています。

授業は、受講生と講師との対話型授業(ワークショップ形式など)を中心に進め、講師が受講生に知識を教えるだけでなく、一緒に考え、学びあう双方向型の学習形態を構成します。

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参加者2 

U市民大学では、「入門」「出会い」「気づき」「担い」のカテゴリーに基づき、地域課題を意識した様々な授業が行われており、そこから幾つもの市民活動団体(グループ)が生れているということでした。
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そうした事例紹介から、都市計画コンサルタントの仕事の奥深さを感じましたが、最後に湯浅さんは、「都市計画コンサルタントは渡り鳥でもある。ある意味さみしい・・・」ともおっしゃっていました。
計画の実行の段階では、すでにその地を離れてしまい、その実現は行政(職員)とそこの住民に委ねざるを得ないということなのでしょう。

だからこそ、プランづくりではそのプロセスが大事であり、そうしたプロセスの段階で行政職員や住民の思いを丁寧にすくいあげ、それをプランの中に盛り込むと同時に、それを実現する仕組みまでを視野に入れたプランづくりが大事になってくるということなのでしょう。

                                   KK