黒﨑さんは若葉台在住で、市民活動サポートセンターの登録団体として「稲城グリーン化プロジェクト」という団体の代表を務めていらっしゃいます。
稲城グリーン化プロジェクトは、ICカレッジのプロフェッサー講座の受講生により令和4年度にグループとして発足しました。
将来的な展望としては、再生可能エネルギーの発電によって公園や街灯の照明を賄ったり、地域のための社会貢献に寄与していくことを目指しています。また、地産地消による持続可能な循環型地域社会の実現を目指し、大丸用水でのピコ発電などを通して、環境啓発活動などを行っています。
黒﨑さんから現在の稲城グリーン化プロジェクトの活動と将来の夢である市民電力の供給などについて語っていただきました。
1 稲城グリーン化プロジェクトの活動概要
稲城グリーン化プロジェクト(以下「IGP」という)の活動目的は、「再生可能エネルギーの普及」と「持続可能な循環型社会の実現」です。澄んだ空、綺麗な水、豊かな緑などを取り戻し、自然と人との共生を究極の目標としています。
2 現在のIGP活動中のテーマ
現在のメンバーは6名と小規模ながら、活動は多岐に渡っています。
分量橋公園でのピコ水力発電を利用したイルミネーションの点灯、アダプト制度として、若葉台公園池から水車小屋までの清掃と分量橋公園からヤナギの公園までの清掃活動をしています。
また、小学生を対象にした啓発活動の一環として、発電水車キットや発電風車キット組立て教室を実施しています。その他、環境汚染の調査として上谷戸川、大丸用水の水質検査なども行っています。
3 発電キットの回覧
小学校高学年用の発電水車キットと低学年用の発電風車キットを主に小学生の啓発用キットとして使っています。今まで、第4文化センター、城山児童館、城山子ども体験塾、本郷児童館などの施設でこれらのキットの「組み立て教室」として実際に動かすところまでを教えています。その他、小学生にはキットを使った啓発活動以外にも、地球環境汚染の問題としてプラスチックによる環境汚染、地球温暖化、気候変動や地球環境汚染についても説明をしています。
今回は参加者の皆さんにこれらのキットが実際に動いているところを見ていただきました。
4 大丸用水の水力発電機について
大丸用水の水力発電機は胸掛け式、最大出力は110w、直径45㎝、翼長90㎝、羽枚数12枚の機能を備えた発電機です。IGPでは、この発電機を使って大丸用水の分量橋堰にてマイクロ水力発電実験を行っています。
そこで発電した電気は、イルミネーションイベントなどに使われています。将来的な構想としては、街路灯、フットライト、電動自転車充電や各種イベントにおける電力供給を目指しています。
5 水車や風車を利用した発電について
水車については、水の勢いを増すために落差と流量が必要ですが、現在、実験している大丸用水分量橋付近の水車では、大きな発電を見込むことはできません。大丸用水については組合がその管理を行っており、市にも許可を得なければならず、大きな発電が可能になるほどの水車の設置は現実的には難しいと言えます。
また、風車についてもやはり多くの発電を得るためには多くの風量が必要になってきます。例えば風の強いビルの屋上に風車を設置したとしても、ビルの構造上、ビルの中にいる人にどうしても大きな振動や音が伝わってしまいます。また、屋上に吹く風も一定方向ではなく、風が舞っていることから安定せずに倒れてしまう危険性もあります。
つまり、水車や風車は自然エネルギーを利用した発電方法ではありますが、その設備投資に多額の費用が必要になることや、電力供給量が一定しないことなど、デメリットも多くあり、将来的にはそれらの課題を解消できる小型風力発電システムの開発に取り組んでいきます。
6 IGPが目指しているもの
IGPが究極の目標として目指しているものは「自然と人との共生」です。
地球環境はこの何年かで大きく変化してきました。昨今、地球単位で起きている「異常気象」は、突発性の現象ではなく、人間のエゴによって起こるべくして起きている現象と言えます。グリーンカーボンと言われる森林への植林や植樹による里山保全の縮小やブルーカーボンと言われる海藻や珊瑚などをはじめとした海洋保全の危機、田んぼや小川をはじめとする生物多様性の減少など、多くの要因が考えられます。これらによって二酸化炭素の排出量が増加し、地球が温暖化したことに伴い、海水温が上昇して「海洋大循環」が起こり、それが今、世界各地の異常気象に結びついていると考えられています。
その結果、各地で洪水や干ばつが発生し、森林火災や北極の氷河が溶け出しています。私たちの子どもや孫の代にはもっとこの状況は深刻化していくことも懸念されています。
IGPはこの問題について、わたしたちの身近で出来ることから始めましょう!ということを提唱しています。具体的には再生可能エネルギー(風力、水力、太陽光、波力、潮力、地熱、バイオマス、生ごみ、畜産糞尿)の活用、ごみを減らす、プラスチックごみを減らす、電気やガスを大事に使うといったことから、始めましょうというものです。
IGPの定期的な活動の中にアダプト制度やごみ収集を入れているのはこのためです。
7 市民電力の提供
最後に黒﨑さんが思い描いている地産地消による市民電力の供給は、賛同者からクラウドファンディングなどを通して、返礼品として地元産品や現在IGPの保有する水車キットや風車キットを差し上げたらどうかという具体的な構想までも提示していただきました。
8 まとめ
ロシアによるウクライナ侵攻によって、俄然、新たなエネルギーについての注目が集まるようになりました。今回、この企画で黒﨑さんからお話をいただいた時期もタイムリーなテーマになったのではないかと思います。
黒﨑さんの構想はとても壮大ではありますが、まずは足元から見直そうという姿勢がしっかりしていて、自分たちのやれるところから、特に地域の中からやっていこうという地道な姿勢に好感が持てました。
今後もIGPの活動が大きく展開し、いつの日か稲城市にも再生可能エネルギーを用いた地産地消による電力供給ができる日がくるように、その実現に向かって活動、研究を続けてほしいと思いました。
(Y.OGAWA)