第163回 金曜サロンスペシャル 『地域貢献として今できること』

 兼田明彦さんは平尾在住で現在は人材育成の会社の代表として活躍されています。
 1986年に大学受験のソフト企画の販売会社に入社し、入社3か月めで営業職500人中ナンバー1の成績を収められました。
 その後、セールスマネージャー、トレーナーとして活躍され、営業統括本部長を歴任後に独立し、塾・医療器の法人販売・不動産売買部を運営等のお仕事で企業され、現在は人材育成の講師として数多くの企業で指導者のための研修を実施されています。
 今回は組織における部下の人材育成がいかに組織の活性化につながり、社会貢献にも寄与していくか。与えられた役割を事務的にこなすだけの人材ではなく、社会や地域において活躍できる人材をどのように育成していくことの重要性をわかりやすくお話いただきました。

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 兼田さんは、現在、キャリアコンサルを中心に4つの分野で活躍されています。1つ目は営業マンとして、2つ目は行動心理学、コーチングを通した社員のマネジメントすをする経営者として、3つ目は人材育成トレーナーとして年間200回に及ぶ企業研修の講師として、そして4つ目は何と葬儀屋の経営者としてそれぞれの分野で活躍されています。
 どの事業も全てが兼田さんの現在を語る上で大切なビジネスマンとしての顔です。なお、葬儀屋はビジネスの一つとしてやってきましたが、稲城市立病院、ひらお苑などと提携しており、亡くなられた千葉真一さんの「お別れの会」も専属指定葬儀社として執り行ったそうです。
 そんな兼田さんが目指すのは、自分の研修に参加した受講生を「他人に与えられた役割を事務的・機械的にこなすだけの人材」から、「社会や企業で活躍できる“人財”」へと変革させること。具体的には、受講生1人1人が、「組織や会社の目的を理解し、その中で自分が何をすべきかを考えて行動し、積極的に働きかける姿勢・態度を持てる」人財となれるように研修を通じて日々指導しています。
 余談ですが、兼田さんは1962年生まれの59歳です。見た目は50歳代前半くらいではないかと思うくらいお若く見えます。ちなみに「サザエさん」の父親である磯野波平さんは54歳だそうです。

1【部下のモチベーションの源泉を理解し自律型社員と しての活躍を支援することが大切】

 ジョン・F・ケネディ大統領は就任演説の中で「国が自分のために何をしてくれるのかではなく、自分が国のために何ができるのか」という言葉を残しましたが、兼田さんはビジネスに限らず、常にそのような思考が必要であると考えていらっしゃるそうです。
 部下を支援していくことによる上司や組織のメリットは次の3点です。
① 部下のモチベーションが上がることで、主体的・自発的な行動を取れるようになる。
② 部下が活躍することで、チームパフォーマンスが向上する。(業績・生産性の向上、コスト削減、新製品・新サービスの創出等)
③ それぞれの個性が発揮されることで、職場が活性化する。
 部下との関係が良くなると思想の質が上がる。これを成功の循環モデルという。その実現過程において1話しやすさや、2助け合いといった行動が必要となってくる。

 氷山の下は何も見えない。その中からいかに部下の可能性、やる気を引き出していけるかがポイントとなる。ビジネスにおいて最も重視すべき3つの要素は
① クオリティ
② コスト
③ 納期限厳守
まずはその基本を守ることから部下に教育していくことが大切である。


2【VUCA時代におけるキャリアの創出】

 VUCAとは、Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。この、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)は、時代の特性を表しています。
 企業にとって望ましいキャリアとは下記のとおりです。
① 変化に適応できるキャリアの形成
② 自分らしさを活かすキャリアの形成
③ 自律的なキャリア形成
 仕事における3つの側面として①何をなすべきか(Must):人材目安などクリア「すべき」こと。②何ができるのか(Can):自分が得意な「できる」こと。③何がやりたいか(Will):自分が楽しめる「したい」仕事

3【良好な相互作用のためには信頼関係が不可欠】

 部下との関係における最も大切な前提条件として「信頼関係」があります。
 ラポールとは、まさにそのような感情を抱き合う関係です。信頼関係は当然と言えば当然のことですが、綿密な計画をすることよりもまずはその関係性を構築することのほうが業務を円滑にするための第一の方策であることに間違いありません。

4【部下とスキルは使いよう】

 上司の持つスキルは、使いようによっては良い方向にも悪い方向にも使うことができます。大切なことはスキルはあくまで道具であって、部下とどのように関わりあいたいのか、どのように成長してほしいのかを理解してもらうことだそうです。
 部下一人ひとりのWill、Can、Mustを把握し、部下に話をさせること、部下に考えさせることは上司の大切なスキルである。
 また、期待の伝え方として①出来るだけ細分化して具体的に部下を誉めること。②人と比べず、発揮したことは部下の「力」として承認する。③部下に伝えた後、自分でどう思っているのかを確認すること。これらが、部下を言葉で育てる上で重要なことであるとのお話をいただきました。

【まとめ】

 兼田さんはエリート中のエリートとして歩んできた方であると感じました。また、その風貌からもやり手のビジネスマンという雰囲気が漂っており、エリートサラリーマンが研修講師をされているような錯覚をしてしまいました。もちろん兼田さんは、企業研修などを専門に手掛けていらっしゃる関係から、お話いただいた内容はとてもわかりやすく興味深い内容でした。
 兼田さんはおそらく、商才やビジネスの嗅覚などにとても優れた人なのだと思います。だからこそ、多くの企業から研修講師として活躍されているのでしょう。
 非の打ちどころがなく、エリート街道を歩んできたようなイメージの兼田さんですが、幼少期から稲城で過ごした少年時代、青春時代など、それなりに失敗や挫折もあったのではないかと思います。
 もし、この次に兼田さんが金曜サロンスペシャルにご登壇いただく機会があった際には、ご自身の半生を振り返っていただき、いきなり500人中1位のセールスをとる話から始まるのではなく、こんな幼少期、少年時代、青年時代を過ごして、ある時は挫折し、ある時は失敗を繰り返しながらここまで辿り着いたという、兼田さん独自のサクセスストーリーというものも聞いてみたいと思いました。

(Y.OGAWA)