話し手 : 箱田敦只(ハコダ アツシ)さん 向陽台在住
テーマ : 「トコロジストのすすめ」
~その場所の専門家になろう~
箱田さんは 公益社団法人 日本野鳥の会の職員ですが、その傍ら2014年に「トコロジスト」という本を出しました。
この本では、箱田さんが「トコロジスト」という言葉と出会い、活動を通じて得たさまざまなノウハウが紹介されているのですが、その活動として、城山公園での自然観察会や城山小学校での出前活動も取り上げられています。
トコロジストを一言で説明すると
トコロ(場所)+ジスト(~する人)=その場所の専門家
ということだそうです。
元平塚市博物館々長の浜口哲一(故)さんが提唱した地域学習の考え方でフィールドを決めて、鳥や虫、植物といった特定の分野だけでなく、その地域の特性や文化といった幅広い分野に興味を持ち、「その場所の専門家」を目指そうという呼びかけのコトバなのです。
この日の話はまず箱田さんの生い立ちからでした。生まれたのは東京オリンピックが開かれた1964年。ですから、高度経済成長期の申し子のような世代で、しかも父親は典型的な転勤族。幼児期に比べ行動範囲が広がり、野山を遊び場としてその土地に深く関わろうという少年時代に、ほぼ1~2年に1回という頻度で引越しをしていたため、土地に馴染むという経験がなかったそうです。
ですから、成人し就職して、子どもが生まれてからも、生活する場所に特別の執着を持たなかったそうです。それでも子どもができると、住む場所に無頓着でいるわけにもいかないと考え、適度の自然が残っていて、子育てに最適な稲城市に越してきたそうです。
そんな折にトコロジストという言葉に出会い、「自分が子どものときに経験できなかったことを、もう一度子どもと一緒にやり直したい」と思うようになります。
そして、娘さんを城山公園の森に連れ出すことから始めます。しかし、公園には喜んで行くものの、森には行きたがらない。手や服が土で汚れるのを嫌い、虫や葉っぱのチクチクした感触、泥やカエルなどの湿ったものを怖がる。
そこからどのようにして抜け出したかというくだりがとても面白いのです。例えば子ども(幼児)との散歩は時速1~2キロが良いのだそうです。すると子ども自身が様々な発見をする。自分の好きな場所を見つけ出す。大人の都合に合わせてはいけないということです。
そんな風に散歩から始まり、遊びの場所を見つけ出し、畑を借り、水中生物にも興味がわく・・・といったふうに2人の行動が広がります。
しかしやがて親子だけの行動では限界があると感じ始めるようになります。それは親と1対1の関係だと、娘が依存的になってしまい冒険をしようとしないからだと言います。
そんな限界を打ち破るために、箱田さんのトコロジスト活動は、幼稚園の「父親の会」での活動、いなぎトコロジストの会の設立へと進化を遂げていきます。
このことを箱田さんは「私から公へ」と表現していましたが、これってまさしく”まちづくり”と同じです。まちづくりも「個人の思いをカタチにする」ための活動だからです。
後半は、トコロジストになるためにはどんなことをすればいいか、と言った話がされましたが、興味のある方はぜひ箱田さんの「トコロジスト」(日本野鳥の会発行)を読んでみてください。サポートセンターいなぎにも貸出用が置いてあります。
(K.K)