開催日:2015年9月9日(水)
講 師:竹内千寿恵さん(NPO法人Mystyle こだいら 代表)
テーマ:私らしい、新しい働き方
〜住んでおもしろい
わくわくするまちにしたい!〜
竹内さんは、商店街生まれの商店街育ち。大学卒業後、教育出版会者で編集に従事。結婚後、1〜2年おきに8回の転勤生活。その間の出産、子育て及び両親の遠距離介護を通じて、地域のサポートの重要性を実感。
その体験がベースとなり、2006年にコミュニティビジネス活性化を目指し、NPO法人Mystyleこだいらを立ち上げます。
そして今も「自分らしく、まちを元気にする仕事」を創り続けています。
そんな竹内さんに、そこに至るまでの体験談とこれからにかける思いを話していただきました。
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これまで様々な講座を開催してきましたが、今回の講座はとてもユニークでした。
それは、「こうあるべき」とか「こうすべき」といった、いわゆる一般的な講座とは違って、竹内さん自身の生い立ちの話であり、その節目節目に、自分としてどう考え、それにどう立ち向かったか、どう折り合いをつけながら前に進んできたかといった、言ってみれば、竹内さんの「生き方」そのものの話でもあったからです。
ですから、話を聞きながら、「自分だったらどうだっただろうか」と絶えず自分を振り返えさせられる機会になりました。
そんな風に、自分のことを躊躇なくさらけ出しながら、本音でこの講座を作ってくれたことにとても感謝しています。
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竹内さんがこの講座のために用意してくれた資料の一つに、「お仕事をめぐる冒険!」と題するB4用紙1枚にまとめられた自分史があります。
それは、真ん中に年代欄があり、その上段に「仕事のトピック」欄、下段に「happy」と「unhappy」欄があって、その時々の出来事が書き込まれていて、さらに「happy」と「unhappy」欄の間を上下するように折れ線グラフが描かれていて、その時々に自分の気持がどちら側に振れていたかが分かるものでした。
これを見ると、家庭の出来事、仕事のこと、地域での活動など、私たちの生活は、その一つを取り出すだけでは説明できないことが良く分かります。
個の人間の中では、それらが単独に現れるのではなく、複雑に入り組んでいて、竹内さんは、その時々に自分の気持ちに折り合いを付けながら前に進んで来たということが推測できます。
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この資料は竹内さん自身の自分史であって、すべての人にとって普遍的なものでない。その意味で、とてもリアルで説得力のある資料です。
家庭をつくることも、子育ても、仕事を作ることも、あるいは仲間づくりや地域づくりに関わることも、一般論では説明ができない、結局はその人個人の問題であり、自分で考え、時には自分で折り合いをつけながら、前に進んでいくしかかないのだというとことを示唆しているように思えます。
自分らしい新しい働き方を導き出すためには、そういった葛藤を通して、前向きに生きたいという意欲の中らから生み出されていくものなのでしょう。
※この日配布された竹内さんの「お仕事をめぐる冒険!」には、個人的なことがいろいろ書かれているので、参加者以外には配布しないようにと釘をさされています。なので、残念ですが、ここにはアップできません。
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竹内さんは自分史のグラフを右肩上がりにするために、その時々にどう考え、どう行動したかを、幾つかの【キーワード】として示してくれました。
以下、それらを紹介してみます。
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ご主人の転勤をきっかけに、人口3万人の徳島の町から東京(小平市)へ、それが竹内さんの大きな転記になります。この頃から竹内さんの生き方は、少しずつ変化を見せ始めます。
その頃のキーワードは【明けない夜明けをこじ開ける】で、
さらに
【実績×人脈をつくる】【お金をかけないスキルアップ×地域貢献】
といったキーワートドを示してくれました。
主婦のネットサークルに参加し、会員管理やメルマガを担当したり、仲間6人でのPC勉強会(お互いに得意なことを教え合う)、PTA本部役員を引き受けるなど、外に踏み出す行動を開始します。
そのことで、地域を知った、仲間ができたと言います。役員を引き受けると面倒なこともいっぱいある。しかし、そこで人間関係を学ぶことができたとも言います。
そして、2001年8月に初めて自分の「夢見る頃を過ぎても・・・」というタイトルのHPを作ります。
そこでは、自分は何ものであり、何をしたいのか、何ができるか、何を目指しているか、といったことを発信します。
すると、そのHPが仕事を運んできた。それを読んだ方から、「NPOの事務局の仕事に興味はないですか?」というメールが舞い込んだのだそうです。
あとで、なぜ私にメールを?と聞いたら、HPを読んでいるとあなたがどんな人かがよく分かる。当然ながらHPを作るスキルも持っている。あとは、本人と会って話をしてみるだけだった・・・という答えが返ってきたそうです。
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その頃から【社会貢献をしながら、それが仕事になっていったらイイナ】と思うようになり、【自分を発表し、発信することの大事さ】を知ったと言います。
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PTAの仲間とは今もつながっている。特に副代表をしていたSさんは、Mystyle@こだいら設立の仲間であり、彼女の生き方、地域のために、皆のためにがんばろうという姿勢からは、多くのことを学んだそうです。
そして【ソーシャルキャピタル(社会的関係から生まれる資本)】の大事さに気づいた。ソーシャルキャピタルが高い地域はコストがかからない。そして、それは「みんな」で前に進む社会です。早く行きたいなら一人で、遠くまで行きたいならみんなで・・・大事なのは、そのどちらを選ぶかです。
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【仕事をつくるハタラボ】
ハタラボはNPO法人Mystyle@こだいらの事務所兼交流スペースです。その法人を立ち上げるのに、3年かけたそうです。
1万時間がんばればプロ、1万時間は1日10時間×3年、そして10時間のうち、8時間は働く、2時間は勉強に充てる。これが竹内さんの哲学です。
そうして時間をかけて立ち上げたハタラボのオープニングセレモニーには、市長、議長、商工会長、市の職員も含め100人近い方々が駆けつけてくれたそうです。
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【仕事をつくる=学びとアクッションをセットにする】
Mystyle@こだいの理念は「Do Tank ラボ」・・・コンサル会社などはよく「Think Tank」と言われますが、Thinkだけではつまらない。一歩前に踏み出すためにどうするか・・・Doを意識して1年間続ければ、やがて葉が出て、花が咲き、実がなるということです。
そうして生まれた事業が
・まちの働き方、ヒューチャーセッション
・商店街空き家ツアー
などです。
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【仕組みを作る・・・まじり合う】
・ こだいら未来会議
やったらやりっ放しでは気持ちが悪い。企画運営講座を受講した人たちは、「小平未来ウィーク」に登録、そこからお母さんたちをサポートする会「小平育みプロジェクト」などが生まれた。
・農家のハウスや商店街でも教室を開いていて、そこから新しい動きが生まれている。
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【仕組みを作る・・・まちを楽しむ×つながり合う】
・ 恋するフォーチューンクッキー(小平バージョン)
・ こだいらまち弁を使った、小さなファンタジー映画を作った。(サンバを踊る。皆が仲間)
【商店街】
・ 昭和のおもかげを残した商店街(一橋学園駅に通ずる学園一番街)で、夏にはサンバ。
・ 私たちの冬の制服は地元の商店で作ってもらった半てん
・ 動物の耳飾りを付けてイベントに参加
・ 裏の屋根は猫道
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【私の大切なことを・・・お日さまとお月さまのリズム】
お母さん方は、いつも飲み会というわけにはいかない。そこで、日が昇ると起きて、暗くなると仕事を止めて帰ることにした。(Mystleは5:30になると仕事を止めて帰ることになっている)。竹内さん自身は7:00に起きて、朝駆けをする。その日の仕事をどうするかを考えながら走るそうです。
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【年を重ねることの楽しみ】
・竹内さんが教えた狭山市の受講生は、企業戦士だったが、カフェを始めた。近所のお母さん方が厨房を務めている。
・78才で個人事業主(3年かけて事業計画をたてた)になり、雇用を生んでいる方もいる。
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【お母さんの卒業・・・そろそろ次の冒険へ】
・ やっていること、できること、能力を見える形で発信。
・ 仕事はきっちり、やることはウッカリ・・・力を抜くことが大事。
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最後の方は【キーワード】の羅列に終わってしまいました。本来であれば、2〜3回に分けて話していただくような内容だったような気がします。それを1回でということだったので、最後の方は、端折らざるを得なかったのでしょう。ちょっと残念でした。
それでも、そのキーワードからは、様々にイメージが膨らみ、創造力をくすぐられます。キーワードだけでなく、竹内さんたちがつくる事業やプロジェクト名についても、名称の付け方が絶妙で、感心させられました。
だれもが参加したくなる仕組みをつくるためには、その内容もさることながら、参加したくなるネーミングの付け方も大事だなァ〜と思いました。
(K.K)